ポータブルバッファアンプ
はじめに
オペアンプとプッシュプルのトランジスタバッファによるポータブルなヘッドホンアンプを制作しました。
iPodと同程度がそれ以下のサイズで持ち運びやすいかつきちんとヘッドホンを鳴らすのに十分な能力を持つポータブルアンプが欲しくなり今回製作しました。
アンプケースについて
ポタアン自作の楽しみの1つにケースが自由に使えるということがあります。世の中には多種多様なケースが出回っていますが、私にとっては大きすぎたり薄すぎたりもしくはデザインがそんなに格好良く思えないものがほとんどでした。自分の中に漠然とした目当てのケースがあったのですがイメージだけあってもなかなか簡単には調べられないものです。 そんな中でHammond enclosureと呼ばれるアルミケースに出会いました。個人的かなりツボに入ったケースでしたが入手方法が中々わかりづらく手間取りました。結局RSコンポーネンツさんで取り扱いがあり通販での購入となりました。 このケースは一部で有名なガレージメーカさんが作っているアンプでも使われています(多分、見た目だけで判断しましたが…) このケースは前後のパネルをネジで固定するタイプです。全面はボリュームや入出力のジャックがついています。背面からバッテリーの出し入れをします。バッテリーは外でも工具を使わずに入れ替えができるように背面のネジを段付きローレット付きネジと呼ばれる手で回せるネジを採用しました。
回路について
大抵のオペアンプは電流をさほど多く出力できない(30mA程度が目安)ということと、限界に近い電流を流している状態ではオペアンプそのものの性能が低下するということでトランジスタバッファをオペアンプの後に入れました。 今回のバッファの構成では無信号時に出力段トランジスタにアイドル電流が流れないB級動作ですがバイアス回路を工夫してアイドル電流を僅かに流すAB級動作にしてもよかったかもしれません。一般にA級動作に近づく程歪が減り、消費電力も増えると言われています。 このポタアンでは電圧増幅はしていないのでアンプというよりはバッファという方が正しいかもしれません。むしろ入力ではアッテネーターを入れて電圧レベルを落としています。 音源にiPodのLINE出力を使っていますが、最大2Vpp程度の大きな出力が得られます。負荷が8Ωだとしても0.1W程度が得られるレベルの信号ですから大きいです。 可変抵抗器はどうしても回しはじめのギャングエラーが出てしまうので常時聞く音量レベルである程度回した点を利用したくなります。そのために入力段でアッテネーターを入れることにしました。
据え置きアンプではケースの大きさにあまり制限が無いため多くの回路を詰め込むことができますがポータブルアンプはそうはいきません。今回は単電源の電池から正負電源を作り出すレールスプリッタ回路をより強力な回路にしたかったのですが、スペースの都合上最もシンプルなタイプ(抵抗分圧+コンデンサ)にせざるを得ませんでした。しかし負荷がヘッドホンということで軽いのでですのでそれほど大きなデメリットにはならないと思います。 何か作るときに制約があると取捨選択が出てきて回路づくりも面白くなります。ポタアンではスペースの制約があるので部品一個採用するかどうかで配線の引き回しの難易度が変わってきますね。
製作に関して
回路図からはわかりませんがボリュームはスイッチ付きのタイプを使用しています。コンデンサの位置などはもう少し検討を重ねた方がよかったかもしれません。 意外と詰まったのがネジに関する問題です。当初ローレット付きのネジはM3のものを購入しました。しかし、このHammond enclosureのネジ穴はM3ネジには大きくスカスカしてしまいました。じゃあM4なのかということですがそういうわけでもなくM4のネジには小さすぎる穴でした。付属のネジは穴より若干大きいのですが無理やりねじ回しで回しこむと溝ができてしっかり固定できるようになっています。 結局最後には穴を拡張してM4のローレットネジが入るように加工しました。 Hammond enclosureは恐らく海外製だと思うのですが何か日本とは違う規準があるんですかね。。。 入出力に関しては入力には3極ジャック、出力には4極ジャックを使用しています。ヘッドホンやイヤホンには4極のプラグを持つものが存在し、3極のジャックに挿して使うとうまく鳴ってくれません。逆に4極のジャックに3極のプラグを挿入しても問題ありません。 そのような理由から4極のジャックを使っています。
特性について
片CH分ですが周波数特性を示します.
[6Ω抵抗負荷 入力レベル1.1V 正弦波] 秋月のDSD式発振器とオシロスコープで特性を調べました。概ね100kHzまでフラットな特性が出ていると言っていいのではないでしょうか。バッファアンプなのに減衰されているのはアッテネーターの影響です。 (2016 9/10現在) Wave GeneとWave Spectraで歪率とを測定しようと思ったのですが、何故かうまく測定できないので歪率特性はしばらく見送ります。
2016.9.10 更新